社内価値と市場価値
一つの会社で長く働けば働くほど、その会社内での価値は高まります。社内価値が高まると昇進しやすくなったり、社内での発言権が増えて仕事がやりやすくなるわけですが、社内価値が高まっているからといって、市場価値が高まっているとは限らない点には注意が必要です。
例えば、社内システムの保守がメインの仕事だとしましょう。長い年月をかけて業務部門や特定のクライアントとばかりの仕事をし、彼らと同じレベルの業務知識を習得し、そのシステム独特の機能を使いこなせるようになり、要件の取りまとめや機能追加が短納期で出来、社内で一目置かれる存在になったとしても、世間一般ではめったにお目にかかれない、あまりにも特殊な業務であったり、その会社のみで使える独特のシステムなどの場合は、市場では思うほどの評価がされない可能性があります。
誤解を恐れずに言うと、社内価値が高まれば高まるほど、市場価値と乖離している可能性を疑う必要があると言いたいのです。市場価値とはある一定の汎用性のある知識や、ニーズの高い専門スキルを持ち合わせている必要があります。
社内価値の評価基準
だからといって、社内価値に意味がない訳ではありません。社内価値は社内で評価されるポイントなので、社内価値を高めなければ昇進出来ません。社内価値を度外視してはいけませんが、市場価値も同じ位重要なのだと言いたいのです。そして、一つの会社に長くいればいる程、市場価値を見失う可能性が高くなり、市場価値が低いままだと転職は圧倒的に不利になります。
その結果、人生の選択肢が少なくなり、今いる会社に生涯を捧げざるを得なくなります。自分は今いる会社に全てを捧げてるから、市場価値は一切気にしない。と肩で風を切って歩くのも昭和の親父っぽくてカッコ良い面もありますが、一方の会社の方はというと、そこまであなたに依存しているとは限りません。社内システムがクラウドに置き換えられたり、業務プロセスを根本から見直されたら、一瞬で社内価値は暴落します。
そのインパクトは、日経株価暴落の比ではありません。自分がITエンジニアとして培ってきた時間と価値が暴落してしまいます。それこそが最大のリスクだと言いたいのです。ようするに、市場価値と社内価値の両輪がバランス良く回るよう、意識しつつ双方を高めなければなりません。
市場価値の高める前に
市場価値を高める前に、まずは、自分の立ち位置を把握する必要があります。そのためには、定期的に自分の職歴を振り返り、定期的に整理するのが良いです。具体的なアクションとしては、定期的に職務経歴書を書くのです。プロジェクトが終わるタイミングなどのキリが良いところで見直せば良いと思いますが、最低でも、半年から1年に一度はメンテナンスすべきです。
例え転職しなくても、職務経歴書は書く必要があると思ってます。なぜならば、自分が何が出来るかが整理出来ていないと、何が市場で通用するのかがわからないままだからです。
案外、自分が何が出来るかが分からないものです。職務経歴書を書き慣れていなければ、手が止まるものです。今まで自分がやってきた事を客観的に見直すチャンスですので、今すぐ職務経歴書を作成してみて下さい。
市場価値の高め方
職務経歴書を書き終えたら、転職サイトに登録してみましょう。転職サイトを活用しますが、別に転職する必要なんてありません。転職サイトを活用する目的は、転職する事そのものではなくて、市場価値を把握することです。頑張って作成した職務経歴書が市場でどれだけの価値があるのかを把握する為に、転職サイトを活用するのです。
転職サイトは無料で利用出来ますし、こういう使い方はしてはいけないなんて、どの転職サイトの規約にも書かれていません。見込み客を確保出来るので、転職サイトからも歓迎される行為です。
スカウトメールが来なければ、市場価値は低いと判断出来るし、プレミアムオファーなどが来れば、市場のニーズに突き刺さるスキルを保有していると判断出来ます。自分の市場価値を決めるのは自分自身ではありません。市場価値を決めるのは市場です。市場に自分の市場価値を測ってもらう手法が、転職サイトへの登録となるわけです。
社内価値を転換する
職務経歴書を書いた経験が無ければ、おそらく手が止まると思います。そればかりは訓練するしかありませんが、社内価値を市場価値に置き換えてやれば、使いまわせる技術は沢山あります。
クライアントからの問い合わせ窓口になり、お悩み相談ばかりの対応をしていたとしましょう。コールセンターみたいなものだからと、職務経歴書にコールセンター経験をツラツラ書いても、市場ではあまり評価されません。
そこを、クライアントへのソリューション提案活動とすると、一気に市場の注目度は高まります。やってることは同じでも、表現方法が変われば、市場での印象もガラッと変わります。
そして自身も、受け身型のマニュアル人間になるのではなくて、クライアントの悩みをしっかりと聞き、一緒に解決する方法を考えてあげるのです。本当の意味でのソリューション提案活動を意識しながら日々の仕事をこなす事で、堂々と職務経歴書に書けるスキルが身につくのです。
そうやって、日々市場を意識しながら仕事をこなし、定期的に職務経歴書をメンテナンスし、転職サイト経由で自身の市場価値を把握する事で、市場価値を高めることが出来るのです。
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