社内SEの実態のお話をしよう4 業務調整編

処世術 IT業界

業務部門との調整もある

社内システムの保守と言っても、プログラムのバグ修正や機能追加といった、いわゆる誰もが思い浮かべるシステムエンジニアのお仕事ばかりではありません。「実際の在庫と、システムで表示されている在庫が合わないから調べてほしい」とか、「生産指示が実態に伴っていない気がする」など、具体的な問い合わせから、抽象的な相談まで様々です。

そういった現場からの声を集めて、調査することも社内SEのお仕事の一つです。調査した結果、システムの潜在的な不具合かもしれないし、現場のオペレーションミスかもしれません。また、原因が判明することばかりではなく、原因が不明のままお蔵入りする案件もたくさんあります。時間は有限なので、調査時間にも限界があるわけです。例えば、顧客情報流出などの、会社の存続に関わるトラブルの原因ならば、全リソースをつぎ込んでも調査すべきですが、仕掛品の在庫数量が若干合わないなどの、黙殺しても構わないトラブルもあります。

トラブル対応や問い合わせ対応に重みをつけて、クリティカル案件から対応していく必要があります。その優先度を判断するのも、社内SEに求められます。ようするに、会社全体の影響を判断するために、状況を俯瞰する目が必要です。そして、対応にリソースを注げない問い合わせに対しても、真摯に状況を説明するネゴシエーション力が求められます。

会社全体のことを考えた結果とは言え、対応の優先度を下げられた業務部門は面白くありません。彼らにとっては、自分たちの目の前の業務が最優先なのです。ようするに、優先度を下げざるを得ない旨を真摯に伝えて理解してもらうプロセスが求められるのです。このやり方を誤るとかなり痛い目に会います。社内SEは、業務部門と足並みを揃えながら職務を遂行する必要があります。業務部門をサポートすることが求められているわけなので、ある意味当然のことです。今回は力になれない分、次回は優先的に対応させてもらうなど、長期的にお付き合いをしていく必要があります。業務調整といえば耳障りの良い言葉ですが、実際のところ「駆け引き」です。業務部門との駆け引きも、社内SEのお仕事の一つです。

会社内での政治的な立場は弱いが、社内SEにキーマンは多い

社内ヒエラルキーの最底辺に佇んでいる社内SEではありますが、じつは社内でのキーパーソンが多いことでも知られています。それもそのはずです。全ての業務はデータとして保管されます。全てデータとして処理されていきます。その全データが集まるところに君臨しているのが社内SEです。特に大きな企業ともなると、他部門領域のデータは、セキュリティとか監査上、誰もが閲覧出来るわけではありませんが、社内SEはそのルール適用外だったりします。システムを保守してるわけですから、当然なのかもしれませんが、実はこれって凄いことです。

社内全ての実データの流れを追うことが出来るのは、社内では社内SEだけだと思います。データを盗むのは犯罪行為なのでご法度ですが、それさえも出来てしまう立ち位置に身を置いているというのは、ある意味特別待遇であると認識するべきです。

社内SEは、ぬるま湯につかってのんびり暮らそうと思ったらいくらでもぬるま湯に浸れてしまいます。逆にスキル向上を目的として、業務部門の問い合わせや要望を真摯に受け止めて対応し続けていけば、ITスキルとビジネススキルの両方を手に入れ、市場価値を飛躍的に高める可能性も秘めている素敵な職種だと思います。せっかくITエンジニアになった、または興味を持ったのであれば、ぜひとも社内SEを目指してほしいものです。なかなか転職市場には転がっていないレア案件ではありますが、狙うだけの価値はある職種だと思います。

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