今ぼくは、外資でITコンサルタントをやっています。ITコンサルタントと言っても、ここ最近は業務内容が多岐に渡っていて、その職種の定義も曖昧です。プログラマーやプロジェクトマネージャみたいに、名前を聞いただけで仕事内容がわかる類の職種ではありません。なのでぼくは、近所の人に職種を聞かれた時は「ITエンジニア」と言うようにしています。ITコンサルタントの仕事内容を一般の方に理解してもらうのには前提知識が必要なので、さらに深い仕事内容を伝えるのが難しいからです。なので今回は、ある程度IT業界に知見のある若手ITエンジニア向けに、ITコンサルタントの仕事内容について説明していきたいと思います。ただし、ぼくが実務でやっている話に偏る事はご理解下さい。また、全てのITコンサルタントがぼくと同じ仕事をしているわけでは無い点も、合わせてご理解頂きたいです。(IT戦略の話に寄ってます。ERPやSAP導入経験は無いのでね。)
ITコンサルタントの職場環境の話
ぼくの日常のお仕事環境ですが、コロナ禍前まではクライアント先にプロジェクトルームを用意して頂いていましたが、今はほぼテレワークです。このあたりはクライアントのコロナに対する接し方で働き方が変わると思います。いまが特別な時期なのでしょうから、そういう意味では客先常駐がベースとなります。仕事内容は本当に多岐に渡り、自分自身何屋さんなのか分からなくなる時がある程色々とやってますが、メインの仕事内容を一つに絞ると「IT投資戦略の策定」になります。
全てのビジネスは「投資」から始まる
IT投資のお話をする前に、ビジネスの基本のキを話しておく必要があります。ビジネスの世界でお金を儲けたければ、まずは「投資」をする必要があります。これはIT業界に関わらず、ビジネスの基本です。例えば小売店の場合、商品を販売して売上計上する前に、必ず仕入をしておく必要があります。これが投資です。メーカーも同じです。製品を販売する前には必ず材料を仕入れますし、材料を加工し製品にするためには設備が必要です。これが設備投資です。全てのビジネスは「投資」から始まります。逆の言い方をすると、「投資」をしなければなにも始まらないわけです。もちろんITも例外ではありません。
だからといって、闇雲に投資するわけにはいきません。原資は有限ですし、投資をするからには投資額以上の儲けを生み出す必要があり、投資の失敗は倒産に繋がります。投資をしなければ何も始まらないが、投資の失敗は許されない。経営者の悩みは尽きません。その悩みを解決に導くのがコンサルタントであり、さらにIT領域に特化したのがITコンサルタントなのです。
IT投資戦略の策定の話
「IT投資戦略の策定」の話に戻りますが、基本的な考え方はシンプルです。「どのくらいのお金を投資すれば、何年で回収出来るのか?」それだけです。例えば、あるシステムを1000万円で構築した場合、投資金額は1000万円です。そのシステムが完成したことで、人件費削減に成功し、毎年500万円かかっていた人件費が300万円に圧縮出来るとします。1年あたり200万円の経費が浮くので、投資金額は5年で回収出来る計算式が成り立ちます。
【利益 / 投資 = 投資収益率】(ROI Return on investment)
(500万円ー300万円)/1000万円 = 20% ・・・5年で回収
桃鉄に出てくる収益率と全く同じ考え方です。博多駅に止まったら物件を購入出来る権利が生じ、収益率50%のラーメン屋を1000万円で購入すれば、3月の決算時に500万円手持ちが加算され、2年で初期投資の回収が完了します。それ以降はボンビーが売り飛ばすまでは収益を生み続けてくれるので、博多のラーメン屋が金の卵を産むニワトリとなるわけです。あれと全く同じ発想です。
ただ、「IT投資戦略」が難しいのは、どのくらいの改善が見込めるのか?未来の予想をしなければなりません。毎年500万円の人件費が生じているのは事実なのでベンチマークとして使えますが、翌年以降、確実に人件費が300万円になり、200万円節約出来るとは言い切れません。未来の話だからです。しかし、投資をしなければ話は前に進みません。ITコンサルタントは、200万円節約できる根拠を徹底的に分析します。仮説を立て、それを検証し、投資根拠を作り上げる必要があるのです。そのためには現場ヒアリングが重要になるわけです。
現場ヒアリング(データ収集)の話
このあたりのデータ収集や分析もITコンサルタントのお仕事なので、現場の仕事の邪魔をしないようにデータを集める必要があります。限られた時間で情報を集めなければならないので、現場の事を知っておくのは前提となります。ようするに深い業務知識が必要なのです。限られた時間の中で現場リーダーから情報を引き出す能力も求められるし、人件費削減が目的の場合、真の目的を隠しながらヒアリングしなければならないときもあります。
データ収集出来たら分析です。分析するためには定量的なデータを収集する必要があります。ここにもジレンマが生じます。データ収集をおろそかにすると、分析が出来ないし、データ収集に力を入れすぎると、現場が疲弊します。このあたりのさじ加減は本当に難しいのです。
プロジェクト体制の話
もちろん、投資金額に関しても妥当性が求められます。上の例では1000万円としてますが、本当に1000万円で出来るのか?システム構築責任者にヒアリングする必要があります。ぼくの会社の場合は自社で一気通貫なので、自社のプロジェクトマネージャに要件を伝え、見積もりをしてもらうわけですが、アウトソーシングの場合だと、もう少しやり取りが複雑になります。自社で一気通貫の場合は、開発人員の要員計画も検討する必要があるし、その前に誰をプロジェクトマネージャにするかで頭をひねります。特にプロジェクトマネージャのリソースは枯渇しているので、基本的には他のプロジェクトと兼任でやってもらうことになります。他のプロジェクトへの影響も考慮しなければいけないので、同時進行しているプロジェクトを把握しておかなければなりません。
クライアントへの提案の話
以上の工程を済ませると、いよいよクライアントへ本格的に提案することになります。本格的にと書いたのには理由があって、ここに至るまでの間には何度か簡単なレビューをしているからです。というのも、現場ヒアリングにも費用がかかるし、部外者が勝手にヒアリングするわけにもいきません。ようするに調査や分析を伴う提案活動には費用がかかり、それらの費用はクライアントが負担します。本格的な提案に至る前の段階で、ある程度の概要は掴んで頂いているわけです。
とはいえ、そこはビジネス。きちんと契約に持っていくための行事は必要です。それがクライアント役員や幹部社員へのプレゼンとなります。提案の規模にもよりますが、比較的大きな一部上場企業がクライアントの場合、関係者が30人以上集まるケースもあります。もちろん喋っているのは一部の役員だけですが、その中で行うプレゼンの緊張感は半端ではありません。億を超える提案なので双方真剣なのです。
この時点では、大勢が見えているものなのですが、それでもビジネスの世界は何が起こるか分かりません。不採用ならばその損失は大きく責任問題に発展する分、採用されれた時の安堵感と喜びは格別です。また提案を採用されたとはいえ、それはスタートラインに立ったに過ぎず、一気通貫でやっている弊社にとっては、予算と納期を超えることなくシステムを作り上げなければいけないし、謳った効果を出さなければクビを切られます。定期的に効果測定をし、期待通りの効果を出さなければ、次の契約はありません。ITコンサルタントは口先だけで仕事が成り立つなんて揶揄されることもありますが、とんでもありません。結果が全ての厳しい世界でもあるのです。
番外編
ITコンサルタントの仕事は本当に多岐にわたります。ぼくの場合、クライアント幹部社員がゴルフに興味があれば、ゴルフクラブの新商品情報を調査しますし、ご子息が大学受験を控えているとの話を聞けば、地元の塾の情報を収集します。もちろん、これらの行為は本来の仕事とは直接関係ありませんが、間接的には貢献してます。彼らとの信頼関係醸成に役立っているからです。当たり前ですが、業務では無いので誰も命令しませんし、クライアントも期待なんてしてません。しかしそこがチャンスでもあります。「こないだこんなことおっしゃってたので、こんなデータ収集してみました。」なんて話を切り出すと、嫌な顔をする方はまずいません。これは処世術です。具体的な事例の一つとして、番外編に掲載致しました。
ここまで、ITコンサルタントの現場の一部を紹介しました。求められる能力は多岐にわたる分、高収入は期待できます。年収を上げたい若手ITエンジニアの皆様にとって、参考になればと思います。
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