電話恐怖症の新人くんがコロナ禍で覚醒した話

処世術 コラム

「最近の若いもんは…」今から5000年前、古代エジプトの遺跡の壁画に象形文字として残っているそうです。いつの時代もジェネレーションギャップは存在していたということなのでしょう。そういうぼくも、「最近の若いもんは…」と思っていたシーンがあります。それは、「電話が鳴っても出ない」こと。それこそぼくらが新入社員の頃は、電話は1コール以内に新入社員が取るのが当たり前でした。先方の会社とお名前と用件を間違えることなく記憶し、先輩に繋ぐのが新入社員の最初のお仕事だと言っても過言ではありません。

残念ながらそんな常識は今では通用しません。ツイッターやラインなどの文字情報でコミュニケーションをとってきた彼らにとって、電話は得体のしれない怪物なのでしょうか?極度な拒絶反応を示しているようです。時代も大きく変わり、体育会系のノリで電話に出る事を強要するわけにもいかず、新入社員が一番最初に電話に出るという鉄の掟を守ってきた先輩社員達にとっては、こうした事態が面白いはずはありません。「最近の若いもんは…」と愚痴をこぼしたくなるのも理解できます。

しかし、電話にすら出ることが出来ないと疎まれ続けてきた新人くん達が、いまは水を得た魚のごとく目を輝かせてイキイキしているのをご存知でしょうか?その環境を作ったのは紛れもなく、このコロナ禍です。在宅ワークが増え、対面形式のミーティングはすっかりなくなりました。社内に鳴り響く電話も取ることがなくなり、その代わり表舞台に出てきたコミュニケーションツールがチャットワークやスラックなどの文字情報を主体としたコミュニケーションツールです。もともとデジタルネイティブである彼らにとって、これらのツールを使いこなすのはお手の物。逆に苦戦しているのが、定年間際のおじさま方です。

イニシアチブの逆転現象

今までは、会議室の端っこでちょこんと座り、定年間際のおじさま方の話を一字一句漏らすことなく議事録をメモしていた新人くん達が、いまでは主役です。飛び交う文字情報の中で積極的に意見を交わしてくるし、読む相手に誤解を生じさせないように適当に入れてくる絵文字が絶妙。「議事録をまとめておけよ」との先輩の一言に対し、該当のスラックのリンクを送りつけて仕事を済ませるスマートさ。一方、時代の流れについていけないおじさま方は、スラック内で発言をすることなく常にオフライン。ひどい方はインストールさえしていない始末に…。完全にイニシアチブの逆転現象が起こっています。いつの時代でも変化に柔軟なのは若者の方なのでしょう。

ニュータイプの時代へ

宇宙世紀0079に突如人類の中に現れ、サイコミュを使いこなし圧倒的な戦闘力を手に入れて戦いを有利に進めていったニュータイプのように、いまの新人くん達は定年間際のオールドタイプからみると、コミュニケーションスピードが格段に違います。終わりのない長い会議に参加することに価値を見出していたオールドタイプは自然と淘汰されていき、スラックやTeamsなどの新しいコミュニケーション方法を駆使出来るニュータイプがイニシアチブを取って行く時代に変わったのです。

オールドタイプが生き残るには、ニュータイプが持ち合わせていない深い知見や経験や人脈を全面に出して戦うなど、椅子にふんぞり返って時間が過ぎるのを待つだけの戦法で生き残れる時代ではなくなってしまったのです。戦闘力には一切関係のない足パーツを取り付ける事が出来ないという理由だけで、延々と戦場に送り込むことを先延ばしにされたジオングのように、いつまでも古い常識にしがみついていたのでは機会損失は大きくなるばかりです。

「最近の若いものは…」と嘆く前に、自分達も新人時代があったことを思い出し、まずは彼らを暖かい目で見守る。そして、新人の頃に毛嫌いしていた、口だけの老害に自分自身が陥っていないかを、今一度見直すよい機会なのだと思います。

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